第12章 フェスティバル
興奮を隠しもしない峯田にミッドナイトが鞭を振るえば、気を取り直した彼女の口から意外な人の名前が聞こえて。
「…選手代表、1-A爆豪勝己!!!」
名前を呼ばれ、立ち台へと無表情で登っていく彼。
爆豪が選手代表なのも驚きだが、どちらかと言うとこの状況が心配で仕方がない。
あの彼はまともなことをいうはずもない。
「宣誓、オレが一位になる」
そう言い放てば想像通りな展開に、一気にブーイングで包まれる会場に思わずため息がでる。
(やっぱりなぁ)
ここまでくればさすが期待を裏切らない彼に、みな呆気にとられながらもミッドナイトは続けて第一種目を発表した。
「今年は…これ、障害物競争!!!」
…
…
説明もそこそこに心の準備も与えられないまま位置につけば、なんとか意識を集中させる。
レースや競争での私の個性テレポートは有利と言えるが、消耗が早い私にはそう簡単にはいかないだろう。
やるからには上位を狙うのは当然だが、この先続く試合に体力と集中力を節約しなければいけない。
「スタート!!!!」
合図が鳴れば全員勢いよく走り始め、我先に互いを押し進む。しかし雄英高の一年生全員なだけあって数も半端がなければ、まともに歩きすらできないカオスな状況に。
(これじゃだめだ…このスタートで出遅れたらもう…)
そんなことを考えていれば、どこからかひんやりとした冷気があたりを包み始め瞬時に理解する。
『これは…だめだ!』
直感的な予感は的中し、一気に足元が氷で包まれ始める。反射的にテレポートしてなんとかその場を逃げきれば、なんとか先ほどの人混みを越えた。
どうやら轟によって生み出された氷はすぐさま地面を凍てつかせ、早速多くの生徒が足を止められた。
なんとか回避した私はそのまま滑りやすい氷を慎重に走りながら、先頭を走る轟を追いかける。周りを確認すれば轟の個性をうまく交わしたヒーロー科の生徒、そして意外にも普通科も生徒も何人かいるようだ。
(テレポートでもっと前に飛ぶか!?
いや今個性を消耗するわけにもいかないな、今は自力で…!)
無我夢中でなんとか前を走れば、今度は大きな影が落ちる。