第12章 フェスティバル
なんとか気を紛らわそうと麗日と会話を突けて入れば、ざわざわと騒がしかった控え室が今度は次第に空気を変えていく。
ピリついた気配を感じた私たちは会話もそこそこに何事かとあたりを見渡してみる。するとみんなの視線は部屋の中心に注がれているのがわかれば、すぐさま向き合った二人の人物が目に入った。
どうやらちょうど緑谷が、あの轟に宣戦布告をされているようで。
いつもに増して鋭い視線で緑谷を見据える轟に、なぜか胸がざわついた。
私にはいまだ轟という人物が不思議でしょうがない。
轟と初めてあった日、彼との穏やかな空気が心地よかった。
会話が弾むわけでも気が合ったわけでもなかったが、初対面の彼に助けてもらったあの時間はどこか心安らいだ。
しかし雄英で再会した彼は冷たく、どこか人を遠ざけるような態度で。
それならしょうがないと下手に関わらないようにしていれば、今度はあちらから話しかけてくれば身の上話までしてくれた。
いったい彼の本当の姿がどれなのか、彼がどうしたいのか、私には未だにわからない。
そんな彼が今度はなぜか緑谷に宣戦布告をしているこの状況は、更なる疑問だ。
そしてクラスの人々も同様に、一体何が起こっているのか分からず彼らの張り詰めた空気に困惑を隠しきれていなかった。
…
…
飯田に呼ばれれば、とうとう私たちは会場へと足を踏み入れる。
想像以上の観客や取材者の数に思わず生唾を飲み込めば、隣にいた緑谷も相当緊張しきっている様子で。
「選手宣誓!!!!!」
中心へと並べば、ミッドナイト先生の声が響き渡る。
「ミッドナイト先生なんちゅう格好だ!」
「さすが18禁ヒーロー…」
「18禁なのに高校にいていいものか?」
『うーん…グレーゾーン…か?』
切島と上鳴の会話に、常闇のもっともな一言に思わず頭をひねる。
「イイ!!!!!」
「静かにしなさい!!!」