第12章 フェスティバル
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雄英体育祭まであと数日。
体育祭は私たちヒーロー科にとってのビックイベントでもあり、プロに見てもらえる場でもある。
当然私も気合いを入れて…と言いたいところだが、ここ最近色々なことが起こりすぎたためか急な話に未だピンときていないのが事実。
出るには全力で挑むつもりだが、気持ち的にはトップを目指すと言うよりも今の自分の力がどこまで通用するかを試したいに近い。
自主練は勿論のこといつも通り行なわれる授業をこなしていれば、いつの間にか体育祭はもうすぐそこ。
そして時は瞬く間に雄英体育祭当日。
予定通りの時間へ学校へ付けば、ろくな説明もないまま早速更衣室で体操服に着替える。そのまま専用の控え室で待てば、皆そわそわと落ち着かない様子で今か今かと待機していた。
「頑張るぞぉ…私頑張るよトバリちゃん…」
『お、おう。気合い入ってるね…』
麗らかとは言い難い雰囲気のお茶子に話しかけられれば、いつもとのギャップに思わずたじろいでしまう。
「そりゃあね!それにしてもトバリちゃんはいつも通りだね」
『んー、なんか未だに実感湧かなくて…危機感湧いてこないっていうか』
「そうなの?雄英入る前とか体育祭とか楽しみじゃなかった?私小さい頃から見てたかいっつも自分がいつかあの表彰台に立ってやるって妄想してたわあ」
『お茶子らしいね…まあ楽しみじゃないって言えば嘘になるけど。テレビ中継とか大勢の観客とか…いくら想像してもリアリティがなくってだなあ』
「確かに現実味ないよね、でもうちの親とか親戚すら見てるんだよね…。どうしようもっと緊張してきたあ〜」
『あはは、まあ精一杯頑張ればろうよ』
「おう!!そういやトバリちゃんの親御さんも見るって言ってた?」
『あー、多分うちは…仕事で見てないかな…』
「そっかあ〜」
周りのそわそわとした空気と麗日の異様な気合の入れ具合に感化されれば、次第に手に汗がにじむのがわかる。
現実味がない、とは言ったものの刻一刻とその瞬間は迫ってきているのが事実。