第2章 エンカウント
どうやらまた異常な姿の自分を見て、通りすがりの人が声をかけてくれたらしい。
横から人の気配がするが、吐き気で頭を上げれない。
かろうじて目を少し開けるとそこには学生靴が二つ。しかし返事をしようともそのまま気絶してしまいそうで、意識を保つのが精一杯。
私はそのまま蹲ったまま荒い息を繰り返した。
「これどうぞ。買ったばっかりなんで。」
靴しか見えなかった視界に、今度はしゃがんだ紅白色の髪の少年が写り込んだ。
どうやら手に持っている水をくれるらしい。
あまり余裕のない私は素直に水をもらうことにし、手を伸ばす。
『ッあ…ありがと…ウッ』
「……」
弱々しくのびた私の手は水のペットボトルに届く前に、再び自分の口を覆った。
そんな様子の私を見かねたのか、彼はペットボトルのキャップを開けそのまま私の顔近くへと水を持ってきてくれる。
『あり、がと…』
受け取った水を両手で持ち、そのままゆっくりちびちびと繰り返し飲んだ。表情変えぬ少年は立ち上がり、一つスペースを開けて隣のベンチへと腰を下ろす。
『はあ……はあ……』
そのまま数分、やっと頭を上げれるまで回復した私は、横の彼に視線を向けた。
さっきは気づかなかったが、かなり整った顔をした彼は、年上か、同い年ぐらいの学ランをきた少年だった。
『ごめんなさい、ありがとうございました。だいぶ、よくなりました。』
鋭いオッドアイの瞳をした彼は、そうですか、と表情を変えずに振り返る。
そして何事もなかったかのように彼は立ち上がり、じゃあ、と言うと少し歩いて前のホームへと立ち去ってしまう。そのまま電車にのって帰るのだろうか、とぼおっと彼の背中を眺めていると手に持っているペットボトルを思い出す。
(…あ、水!)
プシューッ、とちょうどきた電車が前にゆっくりと止まる。
私は急いでベンチを立ち上がれば、彼の腕を掴むと少し驚いた顔でこちらへと振り向く。
『あの、お水。新しいの買います。』
「…別にいいですよ」
『いや、悪いです。買いますから、急ぎじゃないならちょっと待ってもらえませんか』
「……」
『……』