第2章 エンカウント
雄英の試験会場をあとにして電車に乗り込む。
さすがは雄英、筆記もそうだが実技試験もなかなかハードなものだった。
個性を連続して使いすぎると負担が大きい私の体は、想像以上に疲労を感じている。だいぶ落ち着いたとはいえ、未だ足取りが怪しい。
電車の中は帰宅ラッシュなのか人がいつもより多く、座る場所はなさそうだ。
しょうがなくドアにもたれかかりながら、窓から外を眺めた。
眺めていた空は徐々に夕映えの光に包まれる。
(ヒーローに…
私はヒーローになって、人を助けて。
そして私は …)
未だにぼおっとしてる頭で独り言をつぶやいていると、突然襲ってきたのは吐き気。
うっ、と口元を抑えると視界が先ほどのようにまた歪み始めるのがわかった。
(だめだ、立ってられない、いますぐ降りなきゃ)
電車の揺れで強くなる吐き気と揺らぐ意識に耐えながら、急いで次の駅で駆け下りる。
トイレまで行きたいがこの状態じゃ無理と判断し、近くのベンチへと腰を下ろす。
「ッハァ…ハァ…」
荒い息で吐き気と戦いながらなんとか落ち着こうと自分の肩をさすり、目を閉じる。こんなところで吐くわけにもいかず、ジッと気持ち悪さが引くのを耐えた。
おさまれ、
おさまれ、
おさまれ…。
「…あの」
本日二回目の、知らない声。