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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第11章 タイムオフ



『……あは、そうかもね』

「…ハアァ…?」

早歩きだった彼は突然足を止めれば、意味がわからないと言わんばかりで私を睨む。

八の字に垂れ下がった眉で私を凝視すれば、なにが言いたげに口を開く。

しかし幾ら待てど、なにも言わない彼に思わず首をかしげてしまう。
しばらくして今度はまた不機嫌そうに頭を搔きむしり、再びぶっきらぼうに歩き出す彼。

「ッチ!!!だから死に急ぎ野郎なんだよ、勝手にしんどけやモブ!!」

『ああそういう意味か、なる程』

そんな調子で終始不機嫌だった彼と御構い無しの私は、軽く挨拶を交わして(主に自分が)別れれば、また各々自分たちの帰路へと歩いて行った。








その夜、私は久しぶりに夢を見る。



叫び怒鳴る父と、怪我だらけの弟の夢だった。


居間に入るや否や、
痣だらけの弟が見え一気に血の気が引く。


震える体でなんとか弟を庇おうと飛び出すも、
何度も何度も床へと殴り蹴り倒される。


泣き叫ぶ弟の甲高い声が頭蓋骨に響けば、
次第と体に力が入らなくなる。


父が蒸すタバコの煙が肺いっぱいに広がり、
時間をかけて頭からつま先まで身体中に広がっていく。


足が動かない。


手が動かない。



頭ももう働かない。


それでもなんとか手を伸ばそうとも、
いともたやすく父に踏みにじられる。


お姉ちゃんに手をだすな、
そう涙まじりに叫べば無謀にも父に立ち向かう小さな背中。


しかしその背中は簡単に蹴り飛ばされ、
まだ火のついたタバコを太ももに押し当てられていた。


弟は何度も何度も、
床に転がる頼りない姉の名前を叫び呼んだ。


助けてほしい、

もうやめてほしい


私が残りの力でそう父に訴えかけるも、
冷ややかな目はまた私を見下ろすだけ。



どうせまた逃げる気だろ、お前はいつもそうだ



だからお前はなにもできない



彼の容赦ない言葉が私に降ってくる。

涙なのか汗なのか血なのか、
どれだかわからない液体が私から溢れれば父は鼻で笑った。






限界だ。







そう直感すれば電流が走ったかのように体がこわばる。


だめだ、また、


気づけばさっきまで泣き叫んでいた弟の声が止まり、冷たい瞳はもう私を見下ろしていない。






そうして私がまた知らない場所へと飛んでいた夢だった。


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