第11章 タイムオフ
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臨時休校の翌日、普段通り賑わった朝の教室はやはりUSJ襲撃事件の話で持ちきりだ。
「しっかしーどのチャンネルも結構でかく扱ってたよなーなあ切島」
障子、葉隠と尾白の会話を聞いていた上鳴はそのまま椅子に寄りかかれば、俺へと話題をふる。
「びっくりしたぜ」
相槌をうち返答した俺に引き続き、斜め前にいる耳郎がいつものクールな様子で会話に加わる。
「無理ないよ、プロヒーローを輩出するヒーロー科が襲われたんんだから」
「あの時先生たちが来ていなかったらどうなってたか」
「やめろよ瀬呂ぉ!考えただけでちびっちゃう!!」
「うるっせえぞゴラ!黙れカス!!!!」
次第に会話にクラス中が巻き込まれていけば、ヒートアップしていく空気。
しかしそんな中俺はどうしてか、緑谷と俺を挟んだ横の空席に意識を奪われていた。
いつ始まってもおかしくないホームルームの時間に、ほとんどの生徒は席についている。しかし依然として隣の空席の主、希里が現れる様子もなく次第に不安が募っていく。
ふと彼女と初めて出会ったことを思い返せば、実技試験会場で真っ青な顔をして床にうずくまっていた彼女を思い出した。
少し長めの前髪から覗く光のない瞳に、俺はあの時思わず息を飲んだ。
震える背中をさすれば申し訳なさそうにお礼をいう希里の姿は、脆いガラスのようで。
ちょっと力加減を間違えればすぐに死んでしまいそうな、なんとも形容しがたい雰囲気の子だった。