第10章 コンバット
(よかった、無事だったんだ…)
ホッと安堵すれば、
かろうじて聞こえる彼らの会話を歪む意識の中聞いてみる。
「失礼します……オール………」
「塚内くん……」
「…いいんですか、姿が……」
(塚内…?姿…?)
頭もろくに起こせないので、彼らの姿を確認することはできない。
何が何だかわからないが、今の私にはジッとしていることしかできなかった。
「……まった、生徒は……無事か?……」
「生徒はそこの彼と彼女……教師二人は…命に別状なし…」
知らぬ声を聞き取りながら、相澤先生と13号先生を思い出す。
(先生たちも無事なんだ、よかった)
再び安堵すれば、やっと身体中の力が抜けるような感覚。
今度こそ安心しきった私は、そこでそのまま意識を手放した。
…
…
再び目が覚めれば、保健室の窓の外はすでに日が落ちていて。
今度こそ体を動かそうと、なんとか重い腰を起こす。
どうやらだいぶ回復したらしい体は、まだふらつくが動かせるぐらいにはなっていた。
「ああ!!!希里さん……!!」
『緑谷くん…』
すでに起きいて制服に着替え終えていた緑谷は、私の顔を見るなりすぐさま私のベッドへと駆け寄る。
「大丈夫!?腕は痛む!?動ける!?」
『お、おちついて…』
「こらこらやめなさい。…ようやく目覚めたかい」
奥から騒がしい声を聞きつけ、のっそりと出てきたリカバリーガール。
そのまま彼女に体の具合を詳しく聞かれ答えていれば、よし、と一言。
どうやらもう解放させてもらえるようで、ベッドからゆっくりと立ち上がった。
「もう大丈夫そうだね。彼と一緒に帰りなさい、ちゃんと送ってあげるんだよ?」
「え、ああはい!!」
リカバリーガールに促されるがまま慌てて頷く緑谷。
彼女にお礼を伝え深くお辞儀をすれば、いつの間にか誰かが持ってきてくれていた荷物を手に緑谷と保健室を後にした。
「…」
『…』
すでにもぬけの殻になっていた学校は、薄暗く怖いくらいに静かだ。
そこに二人分の足音が響けば、より一層静けさを強調させる。
緑谷はどこか落ち着かない様子でそわそわとしていて、私はどうしようかと迷っていた。
『…あのさ』
「は、はい!!」