第10章 コンバット
瞬時に飛んできた希里さんは庇うように僕に覆いかぶる。
わけもわからず混乱していれば、
次に気づいたのは耳を劈くような彼女の悲鳴。
『ウッ、ああああああああああ!!!!』
僕の頭を守っていた彼女の細い腕があの手に触れられ、
瞬時に希里の腕が崩れ始める。
チリチリと聞いたこともない嫌な音が耳元で響けば、
彼女の白い肌から赤いものが広がる。
バァンッ
しかし今度はどこからともなく銃声がなったと思えば、希里を掴んでいた男の手が撃ち抜かれて。
やっと解放された彼女と僕は、そのまま床へと倒れこんでしまった。
またなんども繰り返される銃声。
混乱した頭で状況を確認するべく、起き上がればすぐさま希里へと視線を落とす。
しかし目に映ったのは青白い表情で眠った希里と、彼女からゆっくりと広がっていく血溜まりだった。
◇◇
(…?)
暗闇で未だぼんやりする意識の中、
目を薄く開けば鮮やかな夕焼けが視界いっぱいに広がる。
思うように体も動かなければ、口を動かす気力もない。
(そうか私、飛び込んだあと…気絶したのかな…)
今までの経験上、副作用からの気絶は何度も経験済みからかすぐさま状況を理解した。
そう考えていると、今度は鋭い痛みが腕に走る。
(これは…あの時掴まれた時の…彼の個性…?)
忘れようにも忘れられない、あの経験したことのない痛みの記憶が脳裏に再び浮かぶ。
内側から細胞一つ一つを壊させているかのような、
独特な感覚と凄まじい痛み。
しかしどうやらすでに治癒が施されているらしく、あの時とは比べられないほどの痛みしか今は残されていなかった。
治癒をすでにされていて、今はベッドに横たわっていることからして、私はどうやら保健室に運ばれたらしい。
再び強い睡魔に襲われ目を閉じれば、突然奥から声が聞こえ耳を澄ました。
「……ばかりは事情が……ないね……」
「…たぶん…活動限界……」
「え………」
意識朦朧とする中、リカバリーガールとオールマイト、そして緑谷らしい声が聞こえる。