第9章 ビギニング
私たちを待ち構えていたスペースヒーロー13号と共に中に入ればそこは想像を超えるほどに広い施設で。新たな空間にワクワクで生徒たちの期待度が高まり、自然と浮き立つ空気。
それに加わり13号先生の注意事項と演説を聞けば、生徒一同はやる気に満ちあふれていた。
「よおし、そんじゃまずは…」
騒ぎ出す生徒を鎮めるべく相澤が重い口を開けば、突然と訓練場内の電気が消えていく。
予想外の出来事に一気に先ほどの楽しげなムードが一転、何事かと全員困惑し、いやに静かになる。
なんだろう、と相澤先生の顔を見れば、彼の鋭い視線になぜだが急激に胸の奥が騒めきだす。
「ひとかたまりになってうごくな!…13号、生徒を守れ」
今までにない真剣かつ恐怖を煽る相澤先生の声色に、動揺を隠しきれない生徒。
全く状況がつかめず、ただその重い空気に圧倒されていると広間の奥に異様な影が少しずつ広がっているのが見えた。
(演出…には見えないな…)
目にしたものに緊張と不安で体がこわばる。
自然と早くなる鼓動が頭の中に大きく響く。
「なんだありゃ…」
切島の声でやっと気づき始めた他の者たち。
確かめるべく目を凝らし、身を乗り出そうとしている生徒に再び異様な雰囲気の相澤が声を張り上げた。
「動くな!…あれはヴィランだ」
ゴーグルをつける相澤を見て、今度こそ悪い予感が確信へと変わった。
本物の、
ヴィラン…?
思わず固唾を飲めば、各々動揺を口にする。
引き止める緑谷を無視しそのまま敵陣へと突っ込んでいく相澤先生をみれば、背筋がゾッと冷える。
(いくらなんでもあんな大人数…しんじゃう…)
考えるよりも先に前へと勝手に動く体は、切島に思い切り掴まれた。
「どこ行く気だ…!?先生の言う通り非難しようぜ!」
『あ、…ごめん…』
そのまま急いでクラス全員で避難しようと出口を目指すが、そう簡単にもいかず。広間で見えた黒い影のようなモヤが突然湧き出てくれば、その物体は出口を塞ぐように大きく広がっていった。
「初めまして、我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟に入らせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいとのことでして…」
淡々と発せられた意味のわからない言葉に、冷や汗が流れる。