第6章 アイスブルー
第1戦目にして、怒涛の展開に皆固唾を飲む。
緑谷と爆豪は何度も交戦しあい、異常なまでの爆豪の執着っぷりに思わずこっちまで額に汗が浮かぶ。
個性把握テストの時にも見たがどうやら爆豪と緑谷は知り合いのようだが、あまり仲の良い関係ではないのは明白だった。
まるで安心できなかった試合はAチームの勝利で幕を閉じたが、どうにもどちらとも釈然としない雰囲気のまま。
みな呆然としながらも、気を取り直して好評へと移り八百万百が厳しくも的確な意見を述べる。一方私はどうやら保健室に運ばれたらしい緑谷の事が気になり、授業そっちのけで大丈夫かなと考えてしまっていた。
しかしそんな時間もないまま、好評を終えた授業は次に私たちBチームが第二戦へと選ばれた。
ヒーロー側になった私たちはビルの前でしばし待機し、しばらくしてオールマイトの声でスタートが流れ私たちはビルへと踏み込む。
早速ビルに入ればすぐさま障子が複製腕で耳を複製し、敵側の正確な位置を感知し私たちに告げてくれる。
「4階北側の広間に一人、もう一人は同階のどこか…素足だな。透明のやつが伏兵として捉える係か」
「外でてろ、あぶねえから」
「?」
『え?』
振り向きもせず奥へと進み壁に手を当てる轟に、つい首をかしげる。
「向こうは防衛戦のつもりだろうが…俺には関係ない」
そう言い放てばみるみる床から、壁から、氷があまりを包み込む。一気に下がる温度で、彼はこのビル丸ごと凍らせているのだと悟った。
『すごい…5階建てのビルをまるごと…』
「ここで待ってろ、俺が行く」
あっけにとられる私と障子に、お構いなく進む轟。しかし私はすぐさま轟を追いかけた。
『あ、まって』
「…なんだ」
『核は4階でしょう、私の個性でそこまで飛ぼう』
「必要ない」
『必要ある、何事も早いに越したことはないでしょう。敵に時間を与えないためにも、これくらいやらせて』
轟くんの前に立ち塞がり、彼のオッドアイの瞳を見た。
彼も視線はそらさずこちらを見据えれば、
「…わかった」
と観念した様子で承諾する。
『障子くん、4階北ね?』
「ああ、そうだ」
『わかった。じゃあいくよ』
轟くんの肩に手を添え、意識を集中させる。横を見て頷く彼を確認すれば、私たちはヒュッ、と音を立ててその場から消えた。