第6章 アイスブルー
『こういうこといきなり聞くのって失礼だよね…ごめんなさい、気づかなくて。今のは忘れて』
そう謝罪をすれば、じゃあ先生の前に戻ろうか、と付け足し歩き出す。
障子も少し困ったような素振りを見せたがそのまま素直にああ、と一言言えば希里ついていった。
俺もしばし呆然としながらも、彼らと共に歩き出した。
彼女との数少ない会話の中で、希里という人物はどこか掴み所がないように思う。
まるで興味がなさそうな顔をしておきながらしれっと周りが聞かないようなことをズケズケと聞いてくる。
自覚なく他人の領域に入ってきたと思えば、その次の瞬間には元の場所へと戻っていく。自己主張が強いタイプにも見えないが、なぜか変なところで頑固な一面も見た。
彼女という人間がまるで読めなく、なぜか少し苛立ちを覚える。
もう一度彼女をみれば、希里はどこか恥ずかしそうに顔をしかめている。そんな彼女を見て少し考えていれば、オールマイトが再び説明し始めていたことに気づきすぐさまそちらに意識を戻した。
◇◇
「最初の対戦相手はこいつらだ!…他のものはモニタールームに向かってくれ」
どうやら自分らのチームはまだ呼ばれなかったので、AチームとDチームを残しモニタールームへと向かった。
歩きながら、さっきの事が脳裏に浮かぶ。
どうして轟くんが左側を使わないのか、失礼か否か考える前に口に出してしまっていた。
そして障子と轟の妙な沈黙の中やっと気づけば、慌てて謝った。
ただでさえ轟くんにはつい昨日釘を刺されているため、正直いたたまれない。
恥ずかしさを感じながらも、授業に集中せねば、と気持ちを切り替えごまかす。
そういえばAチームは緑谷くんとお茶子ちゃん、そしてDチームは飯田くんとあのよくキレている爆豪って人だったな、と思い出し大きなモニターを見上げた。