第4章 クァークス
まるで空気が止まったかのように凍りつく生徒を見て、したり顔でニヤリと笑う相澤はそのまま続けた。
「君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」
「「「あああああああ!!???」」」
あっけなくいう相澤に、私を含め拍子抜けする生徒たち。
「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ」
(気づかなかった…)
そのまま個性把握テストは解散となり、教室に戻るよう指示される。
なんだか本当にあっけなく終わってしまい、脱力感が身体中にめぐる。除籍を恐れ個性を酷使してしまったためか、頭にふわふわと雲がかかるような感覚。
入試の時とは比べ物にはならないが、それでも多少の副作用が出ているらしい。
相澤は緑谷に少し声をかけたあと、そのまま立ち去ってしまった。
それに続きガヤガヤとみんなが更衣室に向かい始め、自分も怪しげな足取りで歩き始める。
きっと緑谷はボール投げの時に負傷した指を治癒しに保健室へいくのだろう、などとぼうっと雲がかった頭で考えていれば急に誰かに肩をガシッと捕まれ思わず硬直する。
「おい、希里。またフラついてんじゃねえか?」
『わ、切島くん。大丈夫、歩けるよ。…多分』
「多分てなあ…さっきから見てりゃあフラフラと歩いてるしよ。心配だから保健室行こうぜ」
『大げさだよ、吐き気も頭痛もないし。少しすれば、』
「じゃあその少しの間横になろうぜ。ほら肩捕まっとけ」
『えっ。あ、あの…』
強引な彼にどうしていいか分からず、されるがまま肩に手を回させられ歩き出す。入試の時とは少し雰囲気の違う切島からは、あの時のような血の香りはしてこなかった。
「なんだよ切島やっぱりナンパじゃーん」
「おい希里は俺が先に誘ったんだぞ!ずりいじゃん〜」
「お前らなあ…保健室に連れて行くんだよ!」
だいぶ距離感のおかしい私たちを見て、野次馬たちが寄ってくる。
芦戸は隅に置けないなあ、などとからかい、上鳴は俺もまぜてよお、と周りをちょこまか。
(確かにこれはすこし恥ずかしいかもしれない…)