第4章 クァークス
「いまのすっごいわあ!!なんだったん!?」
「君、今のはなんだい!?」
「おいおい今のってまさか瞬間移動か!?」
『わあ、』
困惑する希里の周りにみんなが輪になって囲み始めていた。
急な質問攻めにまるでどう対処していいのか分からず、彼女の涼しい顔が崩れる。
『あっと…誰から話せば…』
「ごめんね、私麗日お茶子!よろしくね!」
「ぼ、俺は飯田天哉だ。混乱させてすまない」
「俺上鳴電気!なあなあ今のってどうやんの!?」
『あ、ありがとう。私は希里トバリ。…えっと、さっき上鳴くん?が言った通り私の個性はテレポート。つまり瞬間移動であってるよ』
「まじかあ!始めて見たぜ!」
「む、テレポートか…」
瞬間移動、とういう言葉につられ緑谷も我を忘れ飛び込む。
「しゅ、瞬間移動!!それってすごい強個性だね…!」
目を輝かせながら先ほどの照れを忘れた緑谷はつい希里の目の前へと身を乗り出していた。
「ああ、正直この種目は俺の個性が圧倒的かと思っていたが。驚かされたよ」
飯田は少し悔しそうに、しかし純粋な関心を希里に向ける。
そんな中希里はというと、ああ…と、少し浮かない表情を浮かべた。
『強個性、か。正直この個性かなりコントロールも大変だしデミリットも多すぎて、自分では没個性だと思ってた。でも少しでも強個性に見えたなら、それは嬉しいな』
「没個性…テレポートなんて誰もが一度は夢見るものなのに…ねえもしよかったら詳しく教えてくれないかな?!」
『え?』
必死に抑えてきた緑谷のオタク特有の知識欲をむき出しに、しっかりと希里の瞳を見据える。唐突な申し出に驚く希里だったが、
『…わかった。じゃあこの個性把握テストを終えて二人とも無事除籍処分回避したら、その時詳しく教えるよ』
「…!!…そうだね、お互い頑張ろうッ…!」
今日初めて希里としっかり目を合わせた緑谷は、やっと覚悟を決めた。
自分は人よりも何倍がんばらなきゃだめなんだ、こんな壁一つに苦戦していちゃヒーローなんてなれやしない…!
「うちにも教えて!」
「俺も興味がある、ぜひお願いしよう」
「俺も!てかラインやってる?放課後お茶でもどうよ?」
『ご、ごめんみんな一斉に喋らないで…』