第20章 ブラッドレッド
「なあ…」
『ん?』
私の最寄駅で降りてアパートまで夜道を歩いていれば、切島が少し真剣な様子で喋り始めた。
「お前がさ、いつも何で悩んでるのか…知らねえけどよ。俺たちがいる事忘れんなよな」
『え?』
「俺はお前といるのが楽しいんだ、それはきっと俺だけじゃなくて口ではあんなん言ってる爆豪だって。クラスみんながお前が好きなんだぜ」
『…どうしたの、突然』
「わりい…ただ、知ってもらいたくてよ。いつでも頼れる仲間がいるんだ、お前には」
どこか緊張している彼は精一杯の笑顔を私に見せた。しかし突然の言葉に私はどうすればいいのか分からず、思うように言葉が出ない。ずっと俯いたままの私に気づいたのか、急いで切島が続ける。
「あ、無理して今色々考えなくていいぜ!ただ…その、」
『うん、わかってるよ。ありがとう』
「…おう。また遊びに行こうな」
『うん、今日はありがとう』
私のアパートの前までつけば、足を止める。
それじゃあ、と家へと戻ろうとすれば、突然切島に手を掴まれる。びっくりして振り向けば、彼もまた驚いた様子で真っ赤な顔であたふたとしていて。
『えっと…』
「あ、わ、わりい!なんだか名残惜しくてよ」
そう言いながらもまだしっかりと握られている手に、私も徐々に恥ずかしくなってくる。
ゴツゴツしていて私のよりずっと大きな彼の手は、私のをすっぽりと包み込んでいる。こんなにもしっかりと他人に手を触れられるのは初めてだな、とその感じたことのない暖かさに居心地の良さを感じた。
『…また明日学校で会えるよ』
「そう、だな。じゃあまた明日な」
そういえばゆっくりと彼の手が私を手放す。
彼の温もりが消えていくの感じれば、彼がいった名残惜しい、とはこういう感覚なんだろうかと一人思う。