第2章 転校生の正体
不思議な魅力のある転校生、一ノ瀬ルイくんとの学生生活が始まった。
といっても、私と一ノ瀬くんの接点はほとんどない。
彼はいつも教室の隅でノートに何かを書いている。
デスノートみたいにクラスメイトの名前でも書いて殺そうとしてる……。
なんてウワサもあったり。
彼は私と真逆で、誰とも関わらずに1人でいる。笑顔も見せず挨拶すらしない。
クラスでは浮いているけど、そんな彼のことが私は羨ましくも思えた…。
ある日の放課後
生徒会の会議が長引き、教室へ戻った頃にはクラスは閑散としていた。
「こんな時間だし、もうみんな帰ったよね」
ふと、教室の角に視線を向けると一ノ瀬くんがポツリと座っていた…
そして机には何やら文字が書かれている。
彼はその机の字をじっと見つめたまま動かない。
私は机に書かれた文字よりも一ノ瀬くんが気になり声をかけた。
「こんな時間まで何してるの?まさか居残り〜?一ノ瀬くんって意外とおバカだったりして笑」
私の言葉に彼は無反応。
聞こえてないのかと思い、彼の席へ近づくと……
机にはびっしりとバカ、きもい、しね、神奈川に帰れと悪口が書かれていた。
私は息が詰まり、さっき彼にかけた言葉を必死で撤回しようとした。
「な、なにこれ…ご、ごめん!こんなことなってるって知らなくて…。一ノ瀬くん…だいじょうぶ…?」
彼はまた黙ったまま。
彼は何も悪いことをしていないのに、なんでこんな目に…。
すると、今まで黙っていた一ノ瀬くんが口を開いた。
「いつもこうなる。どんなに次の学校ではうまくやろうとしても、根暗でコミュ障で気持ち悪い僕は結局嫌われる……。」
机に一粒の雫が落ちた……
私はずっと勘違いしていた。
彼はミステリアスで大人なんかじゃない。ほんとは怖がりで弱虫で人一倍ひとりになるのが怖くて…そんな自分が嫌いで克服しようと頑張ってひとりで苦しんで……。
私と真逆じゃなくて、「同じ」だったんだ。
私はあの日から一ノ瀬くんには会っていない。
一ノ瀬くんはずっと欠席しているからだ。
クラスメイトは普段と変わらず、友達とバカ話をしてはゲラゲラ笑っている。
まるで彼が居なかったかのように…。