第1章 無理してる
「ねぇ、もう帰るの?」
そんな私にかけられた優しい声に振り向くと、制服のポケットに手を突っ込み少し疑問そうに微笑む彼がいた。
「深瀬...」
「みんな、まだ帰りそうもないけど、いいの?」
「だって、どうせ誰とも話さないから」
「またそんなこと言って。
だから友達出来ないんだよ」
「友達なんていらないよ」
そう言って玄関に向かう私に「無理しなくていいのになぁ」と笑い声が聞こえた。
無理なんかしてないよ。
私は君が毎日話しかけてくれる、
気にかけてくれる、それだけでいいの。
あくび交じりに廊下を歩く君の後姿を見ていれば、ちょっとでも幸せになれるから。
だから大丈夫。
ずっと、これからも。