第4章 紫苑の空
ザワザワと賑わうライデンの町。
CH郵便社には、今日も手紙を届けたい人が代筆の依頼にやってくる。
カシャンカシャンカシャン、カシャンカシャンカシャン……
配達から戻ったベネディクトが、誰かを誘ってランチにしようと、紙袋を下げて受け付けに入ってくる。
「…あれ?」
お客に混じった見覚えのある顔を見つけて、コツコツと近付いてみると、相手もベネディクトに気が付いた。
「ぁ……、ひっ、久し…ぶり……!」
「やっぱお前か。何やってんだよ、こんなとこで」
「……あの…っ、社長に、会えない…かな」
「社長に?」
「……ぅん…」
「ふーん。……ま、いっか。ついてこいよ」
少女は、コツコツと靴音を響かせるベネディクトの後ろを、黙ってついていく。階段を登り、社長室のドアを開けたベネディクトは、そのまま中へ入るように促した。
「…………っ」
「…!ミオソティスじゃないか!久しぶりだね。入っておいで」
「はぃ…」
「じゃあな、ミオソティス」
「ぅん、ありがとう、ベネディクト」
「おぅ」
ドアを閉めて、またコツコツと階段を降りていく足音が遠ざかる。
「この前は、依頼を受けてくださって、ありがとうございました」
「あ、いや、まぁ……。………もう、大丈夫なのかい?」
「はい。ヴァイオレットが助けてくれました」
「…そうか」
「はい。それで、今日はお願いがあって来ました」
「お願い?」