第7章 目覚めよ、汝
「ねぇ……っ」
「巫さん、ごめん。蓮とちゃんと話したいの」
「蓮、いるの?」
「いるよ」
「…………っ」
美少女な顔を歪ませて。
言いたい言葉を精一杯飲み込むように唇を噛む仕草でさえきれいだって、思える。
蓮だって同じだ。
泣きそうな顔で見つめる先は、巫さん。
かけたい言葉はたくさんあるはずなのに、ぐって、耐えてる姿が視界を奪う。
「蓮」
「…………うん」
「場所、変えようか」なんて笑って。
あたしを横抱きに抱えると。
一瞬風が、吹いて。
気づけば空に浮かんでた。
「━━━━━嘘でしょっ!?」
落ちる。
これ絶対、落ちる!!
「真白ストップ!!暴れないで!重い。落とすよ」
「…………ハイ」
仕方ないじゃない。
空なんて飛んだこと、ないんだからっっ。
━━━━━トン、て。
軽やかに落とされた先は学校の屋上で。
「…………」
沈黙だけが、去っていく。
「真白」
「………うん」
なにが、うん、なのか。
何かに納得したのか、自分でも実際よくわからない。
わからないけど。
出た言葉はそれだった。
「俺……、僕、さ。ずっと探してた。僕の電池くれる人。不安定な肉体を安定させるには新しい命が必要、って、前に誰かが教えてくれたんだ」
「誰か?」
「全然知らない、通りすがりの幽霊。命が一番のご馳走だって。」
「…………」
まぁ、悪霊とか地縛霊の類ってそうよね。
人脅かして、きっと運が悪ければ………。
「……よく、信じたねそれ」
「それしか方法、知らなかったし」
うん。
やっぱり子供だ。
こーゆー短絡的な考え。
「でも、薫に引っ張られる感じであの日真白が来た。本当ならあの時間いないはずの真白が、あの交差点に入ってきて、トラックに轢かれた」
あんまり、聞きたくないな。
それ。
「真白とキスして、繋がって確信したんだ。やっぱり命が必要なんだって」