第7章 目覚めよ、汝
「━━━━━━っ」
ああ、だめだ。
足に力が上手く入らない。
ガクン、と体から力が抜けたと同時に訪れた真っ暗な視界。
「………」
なに、これ………。
なんの冗談?
蓮が、生きてる……の?
でもだって。
浮いてた。
透けてた。
紛れもなくちゃんと、『それ』、だった。
「巫、さん」
「なに?」
「車に、跳ねられたって……」
「ええ。体にも脳にも異常はないはずなのに、目を覚まさない」
目を………。
だめだ。
やっぱり意味がわからない。
あたしもこの肉体から離れた時、蓮に、初めて会った時、確かに眠ってた。
もしあの時と蓮が同じ状態なら。
なんであたしだけ目が覚めた?
蓮はなんで眠ってるの?
そもそもこの人は、あたしの知ってる蓮で、あってるの?
蓮。
蓮いるよね?
近くにいるんでしょ?
あたしが入院した時、ずっとそばにいたじゃない。
なんで出てこないの?
説明してよ。
この状況を今すぐ。
「━━━━━ッッ」
全然意味がわからなくて。
でも巫さんの射すような視線だけがそこにあって。
ぐちゃぐちゃになる頭に、唇をぐ、って、噛み締めた。
「………あーあ、バレちゃった」
「!!」
蓮!!
突然聞こえた声に、反射的に思わず顔を上げた。
「え」
驚いたように、巫さんがあたしを見てるの、感じる。
「内緒にしとこーと、思ったんだけどな」
「………」
「『尊(みこと)』には、見えないよ。そもそもそんな力、ないんだから。」
ぷかぷかと浮きながら。
両手頭の後ろへと回しながら横になるふざけっぷりに、少々苛立ちが募るけど。
ここはこの際、我慢する。
「なに?なに、『見てる』の?」
「…………」
見えないなら。
聞こえないなら。
迂闊に変なこと、話せない。
「俺、だよ」
「え……」
「あそこで眠ってるの、俺」
「は?」
「………真白に孕んで貰いたかったのはね、そのせい」
「……」
「………生き返り、たかったんだ」
生き返る?
死んでないのに?
「ずっと眠ったままで、生きてるのか死んでるのかわかんなくて。俺はずっと、起きてみたかったんだ」
「………」
「そのために真白を、利用した」