第7章 目覚めよ、汝
「……は、……え!?」
あからさまに驚く蓮の顔に手を伸ばして。
唇に自分のそれを押し付けた。
ついでに。
何の警戒もしてないその唇を容易く抉じ開けて、舌を差し込む。
「ん!?」
わざと音を立てるように口の中を堪能、したあと。
ようやく唇が剥がされた。
「……っに、してんの真白」
「キス」
唾液で濡れた唇を手の甲で拭って。
蓮を、壁へと押し付ける。
押し付ける、とは言っても今の蓮はあたしよりも身長だって体格だっていい、大人。
こんなの逃げようと思えばいつだって逃げれるはずだ。
肩を壁へと押し付けたまま、動かない蓮の唇にまた、キスしようと踵を上げた、瞬間。
「━━━━━っ、真白!!」
今度は逆にあたしが壁へと押し付けられていた。
「………なに」
「なに、って……。こっちのセリフ、なんなの、どーしたの真白」
「だってどーせするんでしょ?なら別に今だっていいはずじゃん」
見下ろす蓮の唇に、触れるだけのキスをする。
ほんとはもっと、違うのしたかったんだけど。
手首が壁に押し付けられているせいで蓮を引き寄せることも叶わず。
精一杯背伸びしてなんとか唇に触れるのでいっぱいいっぱいで。
悔しいけどあんな、触れるだけのキスになったんだ。
………悔しい。
いつもはあたしよりもチビなくせに。
だけど。
思いどーりにはいかなかった不意打ちのキスでも、意外にも蓮には効果があったようで。
「え……」
見れば。
顔を真っ赤にして、固まってた。
「蓮?」
「あ……」
呼び掛けると、我に返ったように一瞬驚いて。
恨めしげに蓮の瞳が、あたしを見る。
「なんなの、真白。今度はどーしたのいったい」
「どーもしない。したいだけ」
「は?」
顔の横で捕まってる両手は使えない。
だから。
足を、蓮の足へと伸ばす。
「真白?」
蓮の足へと滑らせるように足を擦り付けて、行けば。
「真白!!」
怒るように、怒鳴る声に顔を上げた。
「………しないなら、他あたる」
冷静に。
無表情に。
淡々と言葉にする。
悟られないように。
気付かれない、ように。
「しないなら、離して」