第6章 カレとカノジョと、僕の事情
「………会いたい人が、いるんだ」
「?」
「どーしても会わなきゃいけない人がね、いるの」
ポツリポツリと話すれいの言葉を、背中を見ながら聞き入れる。
「それが僕の『未練』」
「え」
顔だけであたしを見て、れいはにこりと、微笑んだ。
けど。
すごく悲しそうで。
泣きそうで。
はじめて見た、気がする。
いつも意地悪に笑って、余裕たっぷりに上から見下ろして。
感情なんか良くわかんなくて。
はじめて見せてくれた、感情なんだと思う。
「……会えるといいね」
わかってる。
『会える』わけないって。
だって幽霊だもん。
死んでるんだもん。
『見る』ことは出来ても、『会える』わけない。
はじめて見せてくれた感情にも、そんな皮肉でしか応えられないなんてほんとあたし、性格悪い。
「うん、だから」
「………」
軋ませたベッドの上で、れいがあたしを囲うように見下ろす。
また、この目線。
いい加減見下ろされるの、うんざり。
「早く孕んでよ」
「…………」
「………抵抗しないの?」
唇がくっつくまであと数ミリ。
吐息がかかる距離で、彼はそう低く囁いた。
「抵抗しても力じゃ敵わないもの、無駄でしょ」
「………」
れいの唇はあたしの唇を通り越して。
首へと、移動する。
「おとなしくしててもらった方が、やり易くていいけど」
「早く終わらせてくれる」
「……じゃぁ、遠慮なく」