第6章 カレとカノジョと、僕の事情
「…………れい」
カーテンを締め切った薄暗い部屋に入れば。
ふわりと、カーテンが浮いた。
「そろそろ出てきて」
いるのはわかってる。
ずっとそばにいたのも。
姿が、見えないだけで。
「…………れい」
「なに?」
「…………」
ふわりと、浮いて。
なぜだか不機嫌そうに彼はベッドへと腰掛けた。
「やだよ」
「………なんも言ってないじゃん」
「契約は契約だもん。ちゃんと孕んでもらうよ」
「契約書交わした覚えないもん」
「駄目。無理」
ふい、と。
視線すら合わせようとしない。
「………なら、勝手にして」
「ぇ」
「何よ」
「いや、ずいぶんあっさりしてるなぁって」
「別に。どーでもいいし」
生きてよーが死んでよーが。
どうでもいい。
そんなものに何の未練もない。
「真白?」
薫に、置いてかれた。
あたしを置いていった。
それが事実で、紛れもなく現実。
あたしはもう、薫に必要とすらされなかった。
「………なにもかも、どーでもいい」
倒れこむようにベッドへと背中を預ければ。
硬めのスプリングがそれを受け止める。
「真白」
そのまま唇が重なって。
目を開けると少年は同年代の男の子へと、変化する。
「………病院で」
「?」
「病院でずっとそれ、してたでしょ」
「何?」
「キス」
感じてた。
いつもれいの感覚。
「だって真白消えちゃうじゃん」
「別に、いい」
「………」
どう足掻いたって結局妊娠しなきゃ死んじゃう。
簡単にできるものじゃないことくらい、あたしだって知ってるし。
すべて決められた道順どーりに事は進むんだ。
なら嫌がっても喜んでも。
結果が同じなら。
なにもかも感情なんてなくてもいい。