第6章 カレとカノジョと、僕の事情
あれから文字通り3日3晩、あたしは高熱でぶっ倒れた。
気付けば見覚えのある真っ白い天井で。
腕には長いルート。
管の先には透明な液体がぶら下がってて。
目が覚めたのは実にあれから24時間が経過した頃だった。
「…………」
頭痛い。
だるいし重い。
なんだかすごく眠いし。
辺りは薄暗いし、人の気配すらない。
とにかくほんと、眠くて。
すぐに闇に引き込まれていく。
何度かそれを繰り返すと。
やっと窓からまだ日が射す時間に目を覚ますことが出来て。
「真白?」
「……かお、る?」
やっとの思いで視線を向けた先には。
もちろん薫がいるはずもなく。
一瞬にして変わった顔色で、すぐに全部理解出来ちゃった。
「………おはよう、お母さん」
笑顔でそれだけ言葉にするのが、やっとだった。
あの日、あの場所でぶっ倒れたあたしは、そのまま救急搬送されたらしく。
3日間ずっと、意識がなかったらしい。
と、言うよりも。
人がいる時間に意識が、なかった。
だってあたし、覚えてる。
窓の外が真っ暗だったこと。
すごくすごくトイレに行きたくて、でも体が動かなくて結局寝ちゃったこと。
れいが、ずっとそばにいたこと。
ちゃんと覚えてる。
夢、と言わればきっと夢なのかもしれないけど。
はっきりと断言できる確証なんてないけど。
でも覚えてる。
れいの、唇の感触。
覚えてる。
ずっとずっと。
いつ目を覚ましてもれいの感触を唇に感じてた。
姿は見えないけど。
気配は、感じてた。
「…………いるんでしょ」
窓から入る風でなびくカーテンに視線を向けながら。
そう、問いかける。
「…………ありがとう」
出てこないのは、何か理由があるんだよね?
聞こえてる?
ちゃんと、聞こえてる?
まぁ、どっちでも……いっか。