第6章 カレとカノジョと、僕の事情
「………真白?」
「なんで?」
「ぇ」
「なんで薫、暖かかったんだよ……?ちゃんとものにも、触ってた。あんたみたいに、全然透けてもなかった。なんで?なんで薫……」
だって暖かかった。
腕の中、暖かかったもん。
ちゃんと体温、感じたもん。
「………真白の、想いだよ」
「ぇ」
「真白が『薫は生きてる』って、思い込んでたから。言ったでしょ?ヒトの想いが、俺たちを作るんだよ。」
「………ならなんで?あたしの想いが薫を作ったなら、なんで薫はいなくなったの!?なんでずっとそばにいてくれなかったの……っ」
わかってる。
わかってるんだ。
こんなのただの八つ当たり。
わかってるよ。
だけどぶつける相手が欲しかった。
八つ当たりでもなんでも、薫が消えた事実を受け止めきれなくて。
いなくなった現実が、受け入れられなくて。
「真白が薫を作ったわけじゃないよ、真白」
「………」
「薫の想いが、真白をあの交差点に引き寄せた。真白の想いが、薫をこの世に存在させた。でもね真白」
しゃがみこむあたしに合わせて。
れいも道路へと、膝を就く。
「死んだ人間がこの世に留まれるのは7日間、だけなんだ。それをすぎても留まれば、それはもう悪霊、になるしかない」
「ぇ」
「薫はね、真白と一緒にいたい、って想いだけで留まった。でもたぶん、気付いたんだよ。真白を自分が殺してしまうって。このまま真白のそばにいたら、真白をホントに殺してしまうって。だから薫は、消えたんだ。真白のことが好きなまま、まだ人格を失う前に。真白を愛したまま、消えたんだよ。」
「………っ」
悪霊でもなんでも!!
存在しなくたって別にいい。
殺されたっていい。
「あたしは……っ、ずっとずっと薫と一緒にいたかった!!」