第6章 カレとカノジョと、僕の事情
「薫」
「ん?」
「どこ、行くの?」
「飯行くんだろ?ちょっと遠いけど、も少し我慢な?」
薫の運転する助手席は、大好き。
運転する横顔を見れるのはあたしの特権だって、思ってた。
ずっとずっとこうやって隣にいるんだって。
トンネルの中、どんどん車はスピードをあげていく。
お腹すいた、って、あたしがさっき言ったから?
いつも安全運転の薫にしては珍しくて。
少しだけ覚えた胸騒ぎ。
だけどそれはすぐに違う感情へと、変換される。
「…………」
暗闇の中。
対向車のヘッドライトが眩しく照らす。
急ブレーキを踏み込んだ車のスリップ音が、耳に響いて。
体を重い衝撃が、走る。
『━━━━━真白!!』
いつかと同じように頭に響いた声。
車がぶつかる瞬間。
右腕で顔を庇うように、唇を覆った。