第5章 頑張って我慢して?
「………っ」
なんなの。
なんなのなんなのなんなのっ!?
意味わかんない!!
「いいよもう!!出てって!!嫌いっ、あんたなんか大嫌いっ!!二度とここに来ないで!!」
いい。
生き返るとかもうどうでもいい!!
何がほんとで何が嘘か見極める手段すらなくて、判断なんてできるわけない。
さんざん振り回されて。
肝心なことは全然教えてくれない。
もううんざり。
やってらんない。
「……そっちは良くても、真白に孕んでもらわないと俺が困るんだよね」
「はぁ?」
「だから、孕んでもらうよ?」
ぐい、と腕を引かれれば。
勢いのついた体は前へと倒れこみ、その隙をついて唇が重なった。
「な……っ、ちょっと!!」
…………。
待って。
なんで、浮いてる、の?
生体になったら、人間と同じになるんじゃ……。
「そんなこと俺、一言も言ってないよ?」
「しー」って。
意味ありげに笑うと、れいは窓へと視線を送り。
瞬間。
窓が開いて風がカーテンを、なびかせた。
「何………っ」
「おっきな声出せば、大好きな薫に聞こえるよ?」
「━━━━━っ!!」
なんで。
何、今………。
「ポルターガイスト、なんつって」
「ふざけないで!!」
ふわりと宙に浮かんで。
人差し指をまた、口元へと持っていく。
「カーテンもあけちゃおっか?」
心底楽しそうに目を細めながら、また、視線を送る先は。
「止めて!!」
カーテンへと視線を送る、前に。
窓へと駆け寄って遮る。
ついでに、開け放たれた窓を閉めようと手を伸ばす、けど。
「なんで?」
閉められない。
全然、動かない。
「無駄だって」
耳元で囁く声に、思わず壁へと後退る。
どーしよう。
体が勝手に震える。
怖い。
だって今までと全然、雰囲気違う。
笑った顔が、笑ってない。
宙に浮いたまま喉を鳴らして笑う姿が、すごくすごく、不気味で。
やっぱり幽霊なんだって、思い知る。
「ねぇ真白?今日はいっぱい注いであげるから」
「……やだ」
来ないで。
ほんと無理。
なんで今日、こんな怖いの。
雰囲気が。
表情が。
全然違う。
「だから孕めよ、早く」