第4章 ………聞いても、いい?
「な、ななな、なん……っ」
この変わり身の、早さ。
さっきまで瀕死だったくせに。
なにこの飄々とした落ち着きは………っ!!
「━━━━ああそうだったそうだった」
「?」
「真白ちゃん」
ゾクリ、と、背筋を冷たい何かが通り抜ける。
にやりと笑う、この表情。
弧を描く、目と口。
こんな時はだいたい、良くないことの前触れ。
「お説教、途中だったね」
「お……っ!!せっ、きょう……!?」
「うん」
よいしょ、と。
立ち上がり、座り込んだあたしに合わせてれいも膝を折る。
ゆっくりとした動作を目で追いながら。
ゴクンとひとつ、生唾が喉元を通りすぎた。
「俺がいなかったらさ、真白今頃死んでたよ?」
髪の毛を一束掌にすくいとり、サラサラと流していく。
「言ったはずだけど?目を合わせちゃ駄目って」
「だっ!!から……っ、幽霊だなんて知らなかったし!!だいたい、見えるようになったの、あんたのせいじゃないっ」
「しー」と人差し指を口元へと運びながら。
「口答え禁止」
「………っ」
有無を言わせない表情と口調に、唇を噛んだ。
なんなの、この上目遣い。
これ。
こんなの、中学生がする表情(かお)じゃない。
中身は中学生のくせに。
なんて顔、するのよ。
「真白」
にこりと、今度は子供みたいに笑って。
「ここでしちゃう?」
とんでもないことを、言い出した。
「…………な、なん…っ、無理っ、駄目!!」
「えー?なんで?」
「なんで、って、バカなの?ここ学校!!授業始まってるの!!こんなとこ、教室から丸見えじゃないっ」
「……それってさー、見えなきゃいいって聞こえるよ?」
「━━━━っ!!」
意味、不明っっ
バカなの?
やっぱりバカなんでしょ?
何言ってんのこの子。
「まぁ、真白には今のところ拒否権ないんだよねー」
「は?」
「真白が嫌がっても関係ないの」
「はぁ?」
「言ったでしょ、お説教って」