第4章 ………聞いても、いい?
怪我、してた。
あんなにいっぱい血、出てて。
平気なわけない。
「…………っ」
掌に着いた乾いた血液に、視線を送る。
暖かかった。
触れた血液。
抱き締める腕も。
全部、暖かかった。
『生身の体』。
そう。
キス、すれば。
体浮かないし、体も透けない。
おんなじ生身になるのに。
なんでわざわざキスしたの?
なんでわざわざ、あんなことしたの?
全力疾走で駆け上がった階段の突き当たり。
屋上のドアを思い切り開けて、空に向かって叫んだ。
「━━━━れいっ!!出てきなさいよ!!バカっ」
「………ひっでーなぁ、バカはなくない、真白」
「あんた……」
すぐにぷかぷかと浮きながら現れたれいは、少年の姿に戻ってるし、余裕そうにいつもの虚勢はってる口元は、苦痛に歪む。
そしてそのまま、浮いてることも出来ずに床へと倒れ込んだんだ。
「大丈夫!?」
自分よりも一回りくらい小さな体を抱き起こせば。
背中から感じる、先ほどの生暖かいぬめり。
かなりの量、出血してる証拠だ。
「………」
すでに顔面蒼白だし。
今にも消えちゃいそう。
霊には、エネルギーが原動力なんだよね?
繋がれば、エネルギーが放出される、って。
繋がれ、ば。
キス、なら。
キスくらいなら。
だって助けてくれたし。
キスくらいなら………。
「…………っ」
ぐったりと四肢を投げ出す小さな男の子。
このままじゃたぶん、ほんとに消えちゃう。
消えちゃう、から。
意を決してぎゅう、と目を閉じて。
冷たい唇へと自分の唇を押し付けた。
「………なんで」
なんで、小さいままなの?
いつもならキスすればおっきく、なるのに。
さっきだって唇と唇が触れただけでおっきくなったのに。
「………」
『繋がりが強ければ、エネルギーの量も増える』
『生体へと戻すくらいのね』
「…………」