第4章 ………聞いても、いい?
「…………」
予想してたような激痛とか感覚とか全然、なくて。
おそるおそる閉じた目を開ければ。
「………ぇ」
嘘。
「なんで……」
ぎゅう、って。
あたしの頭を抱えるように抱き締める力強い、腕。
「………大丈夫?真白」
「………だい、じょぶ、みたい」
だけど代わりに。
抱き締める彼の背中へと震えながら手を、伸ばせば。
ぬめりと指先に伝わる、生暖かい、もの。
「真白さぁ、俺言ったよね?絶対目、合わせちゃ駄目って。優しくしてくる霊に気をつけてって!!」
あ、あの子、幽霊だったの??
「言ったよねっ?」
「………言った、けど」
「何っ」
「痛く、ないの?」
これ、背中から出てるの。
床にさっきからポタポタ落ちるの、血、だよ、ね?
「〰️〰️痛いよ、痛いに決まってるじゃん!!生身の体なんだから!!」
「でも、だって……」
なんで。
キス、したの?
さっき。
なんで。
あたしを庇った、の?
「………」
いや、そうじゃなくて。
「医者!!病院、医者に見せないとっっ」
「真白」
ぐい、って。
両手で顔を固定したまま上を向かせると。
あたしを見下ろす、れいの、顔。
「病院には行けない。わかるでしょ」
「で、も……」
さっきから血、流れた、まんま。
「俺は大丈夫」
「でも……」
「人がくるよ真白」
「ぇ」
にこりと笑い。
れいが消えると。
バタバタバタ、と騒がしい足音と共に数人の教師と生徒が、保健室のドアを開けた。
「神、谷?」
「それ、掌についてるの、血?怪我したの??」
血相を変えて駆けよってくる保健医に、慌てて右手を背中へと回す。
「大丈夫、です。窓ガラス、割れちゃって…」
「野球部もテニス部もさっき練習してたからなぁ、大丈夫か?」
「……だい、じょうぶ。━━━━失礼しました」
「え?」
「神谷さん!?」
一礼、して。
保健室を飛び出した。