第4章 ………聞いても、いい?
「なんか、あったの?」
「ん?」
「怒ってる、みたい」
「………怒ってないよ?」
「………」
別に、『れい』、が。
何思ってようが考えてよーが。
あたしには関係ないんだけど。
「今日もちゃんと命繋がったね」
ちゅ、て。
額にキスをひとつ。
「良かったね、真白」
「バイバイ」、と。
彼はそのまま2階の窓から出ていった。
「…………」
はじめはそりゃ、びっくりした。
ここ2階、だし。
普通の家よりもたぶん、高さはあるはず。
軽い足取りで飛び降りちゃうから、思わず窓からあわてて顔、出したけど。
見えたのはポケットに両手突っ込んで平静と歩く、彼の姿で。
あたしに気付くと、「バイバイ」、って手を振ってた。
たぶん住む世界どころか次元すら違う種族には、こっちの常識は通用しないんだ、と、あの時心から思った。
「真白」
お風呂を済ませて、パジャマに着替えて。
寝る準備万端でベッドへと入る。
と。
窓の向こうからよくよく聞きなれた、声。
「薫」
「ごめん、寝るとこだった?」
「大丈夫。………今、帰り?」
「そう」
ベッド横にある小さな窓を開けて、窓枠へと頬杖つけば。
隣のベランダで吸うタバコの匂いも一緒に、入ってくる。
「あー、ごめん、タバコ」
「大丈夫」
「体調、どう?」
「大丈夫だよ」
「真白さっきから大丈夫しか言ってないね」
「だってほんと、大丈夫なんだもん。薫こそ最近、帰り遅いね」
「構ってあげらんなくて、ごめんな」
「大丈夫」
「また」
「だから、ほんと大丈夫なんだってば」
「真白が大丈夫ってゆーときってさ、大抵、大丈夫じゃない時なんだよな」
「………」
「真白?」
「薫の顔見れたし、大丈夫」
えへへ、と、はにかんでみたりして。
好き。
大好き。
世界で一番、薫が好き。