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地縛霊は孕ませたい!?

第2章 世間はそれを、脅迫、と呼びます。





「………真白、真白?」
「ん……」
「寝てた?ごめんなさいね。お友達が鞄持って来て下さったわよ。」
「んー」
「体調悪いなら、おかあさん受け取っておくけど」
「んーん、今行く」



わざわざ持ってきてくれたんだ。
誰だろ。
雪?
雛?
とりあえずお礼は、言わなきゃ。


寝ぼけ眼でムクリと起き上がり、ドアへと向かう。
制服のまま寝ちゃったせいで制服がシワだらけだけど、まぁ、いいや。



「雪村ー?雛ー?ごめんね、ありがと」


ふぁあ、と、あくびをひとつ。
階段を降りて行けば。


「………ぇ」


立っていたのはそのどちらでも、なくて。


「巫(かんなぎ)、さん?」



同じクラスの、女の子。
確か記憶では1度も話したこと、なかったけど。
珍しい名前だからかろうじて覚えてたくらいだ。



「………はい、これ」
「あ、りがとう」
「それじゃ」
「……うん」


ほんとに、鞄届けてくれただけだったんだ。
そのまま帰ろうと踵を返した彼女の長い黒髪が、風になびく。
確か神社の家系、だったっけ。
巫女さん、とかやってたりするのかな。


「………ねぇ」
「ぇ」


ぼんやりとそんなことに思考を巡らせていれば。
彼女は顔だけ、こっちを振り向いた。



「やっぱりあなた、憑かれてる」
「へ!?」
「気をつけてね」



疲れてる?
そんなに疲労困憊、してる?
あたし。
顔に出ちゃってるってこと?
はーぁ。
栄養ドリンクでも飲もうかな。



「………ぇ」



ドクン



て。
おっきく心臓が、跳ねた。
確かに今の今まで手の中にしっかりと持っていた鞄が、消えた。
違う。
すり抜けた。
あたしの手から、すり抜けたんだ。


「真白?大丈夫?」


鞄が落ちた音に驚いたおかあさんからの声で、我に返る。
こんな姿、見せられない。
おかあさんになんて、見せられない。


「なんでもない。ちょっと出てくる!!」
「ぇ、ちょっと真白っ!?」



だって。
だってあたしの体。


透けてる。



透けてるの。


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