第2章 世間はそれを、脅迫、と呼びます。
「!!!━━━薫!!」
目の前。
横断歩道。
人がいる。
人がいる、のに。
「薫!!」
「何、どした?」
「人!!人いるってば!!」
なんで。
減速しないの薫。
「………っ、危ないっっ」
ぶつかる!!
そう思って目を閉じて衝撃に備えるけど。
「………ぇ」
「どした?大丈夫か」
横断歩道を越えても衝撃なんてひとつもなくて。
あわててサイドミラーで後方確認するけど。
人、なんてどこにもいない。
「なんで……」
「真白、ほんと大丈夫か?」
「………だい、じょーぶ」
なんなの。
今日はなんだか、疲れた。
何が起こってんの、今。
だって絶対人、いたもん。
見違えなんかじゃない。
「久々の登校で疲れたか?帰ったら少し寝てな」
くしゃ、って。
左手で頭を撫でながら、薫。
「………うん」
ざわざわ、する。
モヤモヤ?
胸騒ぎ?
なんだろう。
落ち着かない。
「仕事終わったら様子見に寄るわ。ゆっくり休めよ」
玄関前の門のところまで送ると。
そのまま薫の車は走り去っていって。
無気力なまま、自分の部屋へと真っ直ぐに向かった。
リビングから聞こえたおかあさんの声に。
正直なんて答えたか覚えてない。