第2章 世間はそれを、脅迫、と呼びます。
なんで?
何、これ。
どーなってんの。
透けてる。
消えちゃう。
走っても走っても、足が前に出ない。
地面を蹴れない。
なんで?
『助けて欲しかったら、いつでも呼んで』
「………」
呼んで、って。
名前知らないじゃん。
バカ━━━━っっ
どーすんの。
どーなっちゃうの。
あたしやっぱり、死んじゃうの?
せっかく生き返ったのに?
あんまりだぁっっ。
「んー、正確には、生き返ったわけでは、ないんだよね」
「!!!」
出たっ。
しかもまた中学生に戻ってるし。
ぷかぷか浮いてるその姿が今はやけに腹が立つ。
「……助けて欲しい?真白」
「……っ」
この状況で、何悠長なこといってんのよ!!
おとぼけ地縛霊っ
「助けて欲しい?」
おっきな瞳を意地悪く細めて。
自在に体を浮かせながら、少年はあたしを見下ろした。
「真白」
毎度毎度、顔近すぎなのよ。
こんな至近距離、とる必要あんの?
「……て」
「ん?」
「たす、けて」
「………」
どんどん透けてく。
掌から、地面が透けて見える。
「助けて、お願いっ」
「よく、できました」
ふふ、と。
にっこりと微笑みながら。
だけど意地悪なその瞳と表情は健在で。
彼は、あたしへとその両手を伸ばしたんだ。
「いい子だね、真白」
むにゅ、と。
両手でほっぺたを押し潰すと。
開いた唇の隙間から、いきなり幽霊くんの舌が絡み付いてきた。
「!???」
な、何っ!?
この前と全然、違う。
舌先はつつくように上顎、歯列をなぞり、絡み付いた舌は思い切り吸い付いて。
生き物みたいに、口の中で舌が暴れまわる。