第2章 世間はそれを、脅迫、と呼びます。
「真白」
「薫」
学校を出て、ひとりてくてくと歩いていれば。
道路脇をゆっくりと近付いてくる車が1台。
「どうしたの?」
「それはこっちのセリフ。こんな時間にどーした?」
「………あー、えっとぉ」
駄目だ。
妥当な言い訳が見つからない。
「まぁ、追及はしないけど」
「………」
苦笑しながらも、助手席のドアを開けてくれる薫。
「送るよ」
「いいの?」
「打ち合わせの帰りだから、時間あるし」
「でも、仕事中なのに」
「早く乗ってくんないと俺通報されちゃうから。JKに絡んでるおっさんだと思われる」
「やだなぁ、薫は全然おっさんなんかじゃないじゃん」
「いいから、乗って」
「………お邪魔、します」
「ぷ、何その他人行儀。なんかの遊び?おじさんからかうの、止めてねJK」
「そのJKも止めてよね」
「1度言ってみたくてさ」
「その発想がすでにおじさんっぽいよね」
「さっきと言ってること、違くね」
「頭打ったからよく覚えてなーい」
良かった。
ちゃんとあたし、笑えてるじゃん。
薫とちゃんと、うまくやれてる。
裏切った、ことには変わらないけど。
死んじゃってたらこんな風に笑えてなかったし。
うん。
大丈夫。
この体では、薫以外受け入れてない。
あれは夢、って、そー思えばいいんだ。
死んだかも生きてるかもわからないあの場所で起こったことなんて、知らない。
夢、なんだ。
知らない。
「真白?」
「ん?」
「今度は黙りこくってどーかした?」
「しないよ。薫の横顔見てたの」
「惚れ直した?」
「うん、横顔かっこいーって」
「横顔だけ?」
「横顔、も」
「はは、そりゃ付け足してくれてどーも」
ほんとだよ。
薫はかっこいーよ。
あたしの初恋。
ずっとずっと、大好きだったんだから。