第8章 約束
「は、………え、!?」
にん、しん?
なんで?
いつ?
━━━━━誰、の。
「エコーで見てみないことには詳しいことはお答えできませんが、その可能性は大きいと思います」
エコー?
って、産婦人科とかでよく見る、あれに、乗るの?
想像しただけで吐けるんだけど。
だけど。
あたしよりも数倍青ざめて、隣でママが震えてた。
それ、見たら。
さすがに余計な雑念、消えた、かも。
「………薫くん家に、連絡しとくべきかしら」
「え」
「わざわざする必要も、ないわね今さら」
病院からの帰り道。
納得するようにひとり頷くママの隣で、思わず足が止まった。
「真白?」
不思議そうに振り向いて。
ママが手を握る。
「怒るつもりないから、大丈夫よ、真白」
「……」
「お父さんにも、ちゃんと話して謝ろう?」
「……謝る?」
「どーしたの真白?」
謝る、って、何。
「別に悪いこと、してな……ー、っ」
全部いいきるまえに、右頬へと走った鈍痛。
ついでに視界を掠めたのは。
ママの、涙。
「気が動転してるのよ。お母さんだってそうだもの。真白いっぱいいろんなことあって、ちょっと整理する時間必要よね」
『さ、帰ろ』
なんて、いかにもなわざとらしい笑顔、作って。
ママはあたしの手を引っ張り歩いてく。
「………」
あんな顔、させたいわけじゃないんだけどな。
妊娠がおめでただ、なんて言われるのはいくつから?
20才すぎてたらめでたくて。
あたしはめでたくないの?
がっかりしたような、失望したような眼差し。
あたしはそんなに悪いことをしたの?