第7章 目覚めよ、汝
生きる?
この子殺して。
かわりに、生きる?
「まだ人ですら、ない命だろう?気にするな」
人ですら、ない命。
「………」
なんだろう。
すごく嫌な言葉。
聞きたくない、言葉。
でも。
だけど。
「………わかった」
「真白」
「わかった」
だから。
「大丈夫。ちゃんと願って、戻りたいって」
ふたりで、『生きる』んだ。
迷う暇なんかない。
「真白………」
「大丈夫」
大丈夫。
蓮を見据えて、微笑んだ。
「俺が招いた種だ、ちゃんと最後まで責任持つ。お前は先にいけ」
「ぇ」
「願って、蓮」
戻って。
ちゃんと正しい時間の中で、生きるんだ。
「迷うな、集中しろ」
「でも、真白が」
「大丈夫、って、言ったでしょ?」
「━━━━━━ぇ」
ドクン、て。
蓮の身体が、揺れて。
崩れるように床へと蓮は手を着いた。
「蓮!?」
「………妹か」
「尊?」
「兄が近くにいると知った妹は、何をすると思う?」
「え」
「お前が知り得たことならば、妹にも同じだろう?」
「巫、さんが?」
人知を越える、力。
代償。
「………蓮」
「でも………」
「行って、蓮。巫さん、消えちゃうよ?」
「…………もののけ、怪異、悪魔。願うものあらば、こぞって来るぞ、奴等は」
『悪魔さまが、願いを叶えて下さる』
蓮が昔聞いたなら、きっと巫さんだって同じ言葉を知ってる。
きっと、やり方だって。
「自分の力で戻れるうちに、戻って、早く!」
「真白………」
「命かけてまで守った妹、消えてもいいの?」
右目の視力を戻すために、命を代償に願いを込めたんだから。
こんなことで死なせちゃ駄目だ。
「蓮」
「真白………」