第7章 目覚めよ、汝
「助け…?」
え、と。
悪魔が、人助け?
「願いをなんでも叶えてくれるんだよ」
「願いを?」
「………慈善事業じゃない。代償はもらう」
頭の中で広がるおめでたい妄想を打ち消すように、悪魔、と紹介された彼が、低く呟いた。
「代償?」
「命だよ」
「━━━━━━っ」
いの、ち。
「人知を越える力に頼るんだ。代償も高くつく」
ゾク━━━っ
と、した。
この人の瞳。
雰囲気。
威圧感。
重圧感。
どれもが。
はじめて会った頃の蓮と重なる。
「巫さん、を、助けた、って?」
「………子供の時にね、右目の視力をなくしたんだ」
「え」
「火の中に、落ちそうになったの。その時右目を焼かれちゃって。」
「━━━━ぇ」
「俺の、せいだから。俺がふざけてたから。だから。昔からじいちゃんが言ってたんだ、悪魔さまが願いを叶えて下さるって」
まさ、か。
「願ったんだ、尊を助けてって、強く。強く。そしたらほんとに悪魔さまが、現れた」
「あらわれ、た、って………」
「9年前の事故は必然だったんだよ。俺はあの日消える決まりだった」
「え」
「なのに、消えなかった。しかも気付いたら一気に5年くらい時間流れてるし」
「…………」
ぇ、とごめん。
すでに迷子。
展開についていけない。
「目、覚めたすぐあと俺のところにルウ様がきて」
「その名は呼ぶな」
「………、来て、言ったんだ。命は返された、って。」
「?」
「俺にはもう、必要なくなったからな。払われた代償は全て返した。」
「ぇ、でも……」
「どーゆーわけか、体が『ある』のに、戻れなかったのはこいつだけだ」
「で、提案されたのが別次元の『人間』との、交わり。って言ってもさ、人間には見ることすら出来ないのに無理だったわけ。━━━そしたら真白が現れた」
「ぁ、あたし!?」
「そう、真白」