第5章 Tell me cute
「かっちゃん。そのお茶、1口いい?」
「ん」
渡されたコップにゆっくり口をつける。
少しだけ飲んでかっちゃんに返す。ぱちりと目が合って少し照れくさくなりながら微笑む。
「間接キスだね」
実際声に出すと思っていた以上に恥ずかしく、穴があったら入りたい。
「相手の目を見つめて子悪魔っぽくささやけばイチコロ」という記事が脳裏に蘇える。
たぶん、今度こそ間違ってないはず。しかし相手からなんの反応もなく失敗したかも…と思いきや。
いきなり顔を掴まれむりやり上を向かされると目の前にはかっちゃんの顔があった。
驚いて離れようとしたががっちりと掴まれててそれは叶わなかった。
自分の唇に押し当てられた熱を含んでいるやわらかいソレがなんなのか理解するのは停止気味な脳でも容易いことだった。
何度も角度を変えてキスを落とされてようやく離れることができた。
「俺は直接したいんだよ」
「かっちゃ…んっ、」
「うるせえ」
そしてまたかっちゃんがなんの躊躇いもなく私の唇を奪う。
唇が離れたから顔を両手でふさぐ。ちらりと指の隙間から横を覗くとかっちゃんは極悪人面でにやにや笑ってた。
私の羞恥心と引き換えたテクニックはぜんっぜん効果がなかったようだ。
むしろ私がかっちゃんに…逆効果にもほどがあるよ馬鹿と自暴自棄になり涙目になる。
部屋に戻ってからあのAV女優の名前を検索した。
出てきたのはたしかにかっちゃんが持っていたAVのパッケージと同じ顔の女性だった。
求めていた検索結果がでて、とりあえず彼女のプロフィールを開いた。
彼女はきれいな長い黒髪と豊満な体が特徴で、これぞ大人クールと言わんばかりの妖艶な色気からは想像できないたまに見せる少女のような愛くるしい表情のギャップと美しすぎる美脚と爆乳のコラボレーションで人気が高いらしい。
見れば見るほど自分とは真逆すぎて唖然とする。
真逆のストレートな黒髪に皆無な色気、美脚なことも真逆だし顔だってこんなかわいくない。
ここまで違うとなんて、もしかしたらかっちゃんは素敵な大人なお姉さんが好きなのかもしれない。
「この女優さんみたいになってやる」
決意を声に出して、もう1度目標である彼女の容姿を目に焼き付けた。