第5章 Tell me cute
翌日も朝リビングで会ったかっちゃんに「行かなきゃ行けないところがあるから」と言って軽く挨拶をして別れた。
ものすごく不機嫌そうに顔を歪めながら舌打ちをされたけど仕方がない。
ホークスと駅から少し離れた場所のショッピングモールにある評判のいい洋服店に行った。
落ち着いた雰囲気の店内は大人の女性って感じがして、店員さんもお店にいる女の人も綺麗で可愛くて私だけ場違いな気がする。
ホークスはそんな私の気持ちを知ってか知らずか繋いだ手を引いて颯爽と奥へと入っていく。
「このワンピースかわいい!あ、あとこれとこれも!」とパパッと服を取ると私にその服を持たせて試着室へと押しこんだ。
びっくりして変な声をあげると、その服試着してみなよと彼の明るい声が聞こえてきた。
渡された服を見てみると白や水色といった淡い色のワンピースばかりだった。
こんな服を私が着ても似合わないしかっちゃんには馬鹿にされそう。
しかしホークスを待たせていることもあって羞恥との葛藤を繰り広げながら服を着た。
1時間近く私のファッションショーを見ていたホークスにその中でよかった服を何着か決めてもらい、それと靴を購入して次の店へと向かった。
服買うだけなのにこんなにも時間と労力を使うなんて知らなかった。
階段を上った先にあった次の目的の場所とやらは化粧品売り場だった。
化粧なんてしたことがない私はもちろん化粧品売り場に来ることがない。
初めて入る場所に緊張して手に汗がにじむのを感じる。
いざ中へ入ってみると思っていたよりキラキラしていて大人びた雰囲気だった。
1つのものに何色も種類があり、自分に似合うものを見つけるのは大変そうだ。
真っ赤な口紅をつけた自分を想像して思わず失笑した。
軽くパニックになりながらもホークスのおかげでグロスや化粧水など化粧の初歩的な道具を買うことができた。
今日1日で大量にお金を使ってしまい、可愛くなるためとはいえ少し痛手だ。
ホークスにお礼を告げて別れる。
寮に帰ったらすぐに女子力の知識を頭に詰め込んで、たった1日ではほとんど効果はでないだろうが果物や豆類をたくさん摂って少しでも肌の調子を良くしておこう。
10時には寝ないと、そう思いながらさっき買ったばかりのミネラルウォーターを飲みほした。