第4章 Rouge begins
「ほんとに?本当に凛ちゃん?」
「うん」
「なんで、どうして君がここに」
「どうしてって言われても…」
私、ここで働いてるの。と凛ちゃんは表情ひとつ変えずに言うと僕らにソファーへ腰を下ろすように言った。
パンツスーツ姿の凛ちゃんは手に持っていた束の資料の中から数枚をテーブルに広げ向かい側のソファーに腰を下ろした。
「そんなところでどうしたの?」
今だに立ったまま座ろうとしない僕たちを不思議に思ったのか凛ちゃんは首を傾げる。
ハッと遠ざかっていた意識を戻し横を見ると、目を見開いたまま固まる轟君。
それもそのはず。だって、凛ちゃんは、瞬木凛は、高校卒業とともに僕らの前から姿を消したんだ。
高校を卒業して、当然、どこかのヒーロー事務所で働くのだろうと疑わなかった僕らを見事に裏切り、彼女とは誰とも連絡を取れなくなった。
おかしいと始めに気がついたのは誰だったか。
定期的に行われず同窓会に一度も参加せず。
全国のヒーロー事務所を調べても彼女の名前は見つからず。
元担任である相澤に聞いても首を横に振るだけ。
ここでやっと彼女の行方が分からないことに気がつき、みんなで必死に彼女を探した。
なんで?どうして?プロヒーローになってないの?
1年目はそんな気持ちで彼女を探したが、2年目は少し変わった。
ヒーローしてなくても良いから、どうか無事でいて。そんな気持ちが募っていった。
そして更に月日は流れて段々と僕たちも忙しくなり、凛ちゃんの行方を探す時間もなくなって今に至っていたが。
「…は?」
かっちゃんだけは違った。