第2章 merry you
「ねぇ、かっちゃん。いつになったら諦める?」
「あ?諦めるのはテメェだ凛。それに、諦めないのが俺なんだろうが」
「それとこれとは違うよ」
それに、公安も多分許可してくれない。なんて言っているお前は知らないだろう。
今じゃホークスに会う度に「そんなにあの子のこと想ってくれてるんだ。もう間違いは起こさないでね」なんて言いながら憐みの目で俺を見るんだぞ。泣きそうだったわクソが。
「テメェが頷くまでやめねぇわ。この先何年かかっても、何十年かかってもな」
「…私のことなんて、好きでも何でもないんでしょ?」
凛をは俺の言った言葉を素直すぎるほど率直に受け止める。
なのに、プロポーズの度にぶつける俺の「好き」を信じないのは、浮気の件もあるがそれよりも前に「お前のことなんて好きでも何でもない」と俺が言い続けていたからだ。
馬鹿にもほどがあるが、吐いた言葉は戻らない。
それ以上の言葉で上書きするしかない。
それがどんなに情けなくても、無様でも。
「好きだ」
まっすぐ目を見て言えば、凛が息をのむのが分かった。
漆黒の瞳がわずかに揺れる。
無意味に思えた無数のプロポーズは、案外心に爪痕を残していたらしい。
攻めるなら今しかない。
「好きだ、お前が」
誰より。
緊張から語尾が掠れた。