第2章 merry you
いやそもそも告白された時も、返事をせずにキスで済ませたせいで凛はセフレだなんだと勘違いしたのだ。
なんの言い訳もない。俺が悪い。
酒が入ったせいで弱気が入り込み、このまま凛が出て行くのを手をこまねいて見ているしかできないのか、と呻いていると、ホークスの羽が俺の頭をはたいた。
普段なら爆破し殺しているが、今はそんな元気もない。
「言うけど、失敗したのは君だ。一度無くなった信用は取り戻すのに倍の時間がかかる」
「クソが…40年かかんじゃねぇか…」
「えっなにそれ怖…」
凛の信用なんて、それこそ5歳の時以降無くしてばかりだ。
虐めて泣かせて踏みにじり続けた小学、中学から、浮気して振られた今に至る20年の倍となれば物凄い年月だ。
ホークスが思いっきりビールを煽って立ち上がった。
「情けない。君の気持ちはそこまでかい?」
「40年かかるし諦めるっていうなら、早めに諦めな。凛に次紹介しやすいし、何なら俺が引き受ける」
うるせぇ。あと何ボソッととんでもないこと言ってくれてんだ。次ってなんだ、テメェなんか許すわけねーだろ。
「なに?一回振られたらもう諦めるんだ?結構メンタル弱いんだねバクゴー。あ、ぼんじり追加で」
は?誰に向かって言ってんだ。
あとさっきから追加注文しすぎだろうが何本食うんだテメェ。
どいつもこいつも好き勝手言いやがって…俺を誰だと思ってやがる。
「素直に好きって言えないくらいの“好き”なら、もう諦めろ」
ホークスの言葉が俺の導火線に火をつけた。
諦める… 凛を?冗談じゃねぇわ。
浮かんでいた涙はとうに引っ込んだ。ゆらりと立ち上がって、両掌からブスブスと爆煙が立ち上る。店の火災報知器が反応しそうだが知ったことか。
「ざっけんな!!!凛は5歳ン時から俺のもんって決まってんだよ!!誰に何言われようがぜっっっっっってぇ離すか!!!」
BOOOOOM!!!
火災報知器はやっぱり鳴った