第1章 理想のペアとさつきたち
「妖怪がこう目の前にいるんじゃ、赤也のこと、からかえなくなったな」
頬に汗が流れる丸井に木手は鼻で笑い、
「バカバカしい、どうせ合宿所の誰かが脅かしているんでしょう」
と、冷静に言っていました。
「お前なぁ、ホンモノの妖怪が現れているというのに何をそんなことを言ってるんだ……」
呆れた表情の丸井です。
「田仁志くん、平古場くん、そこにいるのバレバレですよ。姿を現しなさいよぉ」
幽霊や妖怪の存在を信じぬ木手は闇目を狙ってサーブを打ちました。
「はぁ、あれが田仁志たちなわけがないだろい……」
細目で小さくため息をつき、丸井も闇目にサーブを打ちます。すると、闇目は姿を消し、いなくなってしまいました。
「闇目が消えた!?」
辺りを見回す桃子です。さつきたちも辺りを見回し、
「ううん」
「あいつはまだその辺にいる」
と、身構えます。
理想のペアも辺りを見回していると、丸井は壁の大きな影を1つ見つけ、みんなに闇目が出たと報告しました。すると、木手がやれやれとその辺を歩き出すと、壁の大きな影も同時に動いたのです。
「何だ、木手の影だったのか」
「で、何が闇目ですか」
冷ややかに笑い、至近距離で言ってきた木手に、
「……闇目はいなかった」
むすっと丸井はそっぽを向いたのでした。