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暁の契りと桃色の在り処 ー信ー

第14章 春の輪廻


「可愛い!咲、見てぇ。」

『まぁ、安土にはあまりない柄や形でございますね。』

『太鼓は信長にもたせてやれ。』

「ははっ。信長様、はい、どうぞっ。」

私が小さな鈴の付いた太鼓を差し出した。
カラカラ、チリチリ。
可愛い音が鳴り響く。

「もっと優しい顔でお願いします。」

『貴様っ!』

ふっ。謙信様と信玄様が笑い出す。

ぽこっ ぽこっ

「あっ、動きましたよ。ほらっ。太鼓喜ん出るんじゃないですか?」

『誠か?』

『触らせてくれ!』

謙信様と信玄様がお腹に手を当てた。

カラカラ、チリチリ。

ぽこっ ぽこっぽこっ。

『…腹の中にいる命とは不思議なものだな。』

『あぁ。誰もが全て、命の始まりはこのように同じなのだからな。』

『俺も謙信も、そして信長。貴様も…、ここにいる全員がな。』

「命は、廻り廻って繋がるんです。
草木が季節を繰り返して、花や実を付けるように。
何年も何百年も、私達は繋がり続けていきます。
戦が世を作るために必要なら、最小限に。
そして、誰もが同じ始まりを認められるような世を早く作ってく
ださいね。」

私の言葉はふんわりと風にのる。
その場にいた全員が話をやめて、私の言葉を聞いていた。

『貴様の奥であるのが勿体ないな。やはり、。越後に来い。』

『そうだな。春日山のやつらにも天女の話を聞かせたい。』

「だっ、駄目ですよっ。今日、この子の護衛が決まったんですから!」

『護衛?』

「はい、それが…」

優しく腰を支える信長様の腕に少しだけ寄りかかりながら、私は道中の話を始めた。





『信玄、毎度喜んでくれるからな。甘味の皿は特別仕様だ。』

『なんと…。独眼竜。これは恩に着る。』

『は、少しずつな。重箱の中身も少なめに用意したが大丈夫か?』

『、あまり食べられないのか?』

『謙信。子がせり上がると胃が苦しくなるようだ。』

「何回か分けて食べたり、少なめに用意してくれてます。」

信玄様と私のお皿には、きなこ餅、ずんだ餅、みたらし、あん団子、そしてカステラがのっていた。

「カステラだ!政宗作ったの?」

『まさか。それは信長様からだ。』

『南蛮から取り寄せた。』

「わぁ、頂きます!」

『俺にまで、かすてらを…。』

『あぁっ!信玄様、食い過ぎっ!』




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