第14章 春の輪廻
『まぁまぁ、お前たちのもあるから。』
『伊達っ、そうじゃねぇ!』
『信長様にはこちらを。』
『光秀!それは、俺が隠してたやつじゃねぇか!』
『おや、そうだったか?…兄様は茶をたてるんだろ?』
私と信玄様の手元は甘味。信長様は金平糖。謙信様は、梅干し。
『食え。』
ぱらりと梅干しに金平糖がのる。
「あまじょっぱいのかな?…あますっぱい、か。」
食事の後の甘味と一緒に、香るのは抹茶のいい匂い。
秀吉さんが、ちらちらと上座を見つめながら人数分の茶をたてていた。
「やっぱり政宗の作る料理も甘味も最高!」
『ありがとな。出産に向けて体力付けなきゃな。』
『独眼竜、土産につめてくれないか?』
『あぁ、言うと思ってた。もう準備してる。』
『信玄様っ、伊達っ!』
『まぁまぁ、幸。今日は仕方ないさ。絶品なんだからさ。食べてみなよ、このずんだ餅。』
『ったく、佐助まで。』
『絶品ずんだ餅に七味かける?』
『いっ、家康公!いいんですか?』
『あぁ。今日だけ特別な配合だから。』
「なに、優しい…。」
『あぁ、本当に。さん。ありがとう…。頂きます。』
「あ、いや、私はなにも。」
『ごふぁっ!』
『さっ、佐助!』
佐助くんが目の前で悶絶し始める。
「ねぇ、家康。特別配合って…」
『唐辛子と山椒をいつもの10倍。』
意地悪な笑みを佐助に向ける家康は、ある意味、怖い。
「うわぁ…」
『ぐっ、ぐあっ。ゆっ、みっ… 』
『なんだっ、なんだよ、しっ、死ぬのか? 徳川、お前っ』
「幸、水。だよ。多分…。」
『あ、そうか!』
竹ずつ一杯の水をのみ干している佐助を横目に、家康が私に話した。
『忍への挨拶だっけ? するんでしょ?』
「え、いいの?」
『いいもなにも、奥方のご希望なら…』
『ふっ。』
家康と信長様が眼を合わせた。
『あのこぶしの花が少し咲いてる木の下で、俺、政宗さん、光秀さんって順に集まるから。立てる?』
「うん、信長様行ってきます。」
『あぁ。家康、頼んだぞ。』
『はい。』
『おい、全て終わったら軒猿の番だ。呼べ。』
『…はい。』
ゆっくりと手を引いて歩き出す。
ちらりと佐助くんを見ると、唇を腫らしながらOKサインを出していた。