第14章 春の輪廻
『えっ、結局、軒猿に挨拶するの?』
「家康。うん、謙信様がいいって。」
『へぇ…。じゃあ、光秀さんや政宗さんに聞いとく。』
「えっ、いいの?」
『あっちの忍に出来て、こっちに出来ないなんて…ないからね。』
『あっ、あの!家康公も忍を?』
『そうだけど。…なに?』
『装束の統一はありますか?』
「佐助くん…」
『ある、一応。』
『あのっ!』
『あげるわけないでしょ! それ着て安土にこられたら困る。』
「そんなぁ…」
『あのなぁ。御舘様が黙認されているとはいえ、来すぎなんだよ。』
「秀吉さん…。」
『御子が御産まれになったら。警備はもっと厳重にするからな。』
『佐助様、警備態勢についてご相談が。』
「石田…、それ佐助でいいのかよ。」
『出来れば真田様もご一緒に。城下の不備などをお教えいただきたいです。』
『えぇ…。なんでだよ?』
「外から見ると意外な穴がわかるってことかな?」
『流石、様っ!』
「じゃあ、幸。天女への贈り物を出しておいてくれ。そしたら、行ってやりなさい。ちゃんと嘘とかは言っちゃ駄目だよ。」
『あ、…はい。』
「贈り物? この間も頂いたのに…」
幸が私の前に木箱を二つ用意する。
『僕たちのは後で。』
佐助くんがそう言うと、幸と一緒に秀吉さんと三成くんの方に歩いていった。
『開けてやろう。』
謙信様が私の前に膝を付いた。
「自分で開けますからっ。」
そう言って手を伸ばした時だった。
ふあっ
真っ白な綿毛のような襟巻きが首元を包んだ。
「これっ。」
『俺の襟元と同じもので仕立てた襟巻きと羽織だ。首周りが暖かいだろう?』
現代で言うポンチョのようだった。小さな小花柄の生地は裾に向けて朱がグラデーションのように濃くなっている。
「ありがとうございます。素敵。」
『髪にさした垂れ桜の簪も似合っている。』
「あ、これは反物屋さんのご主人からの贈り物で。」
『こやつは、城下で俺より人望がある。』
「信玄様、甘味屋さんのご主人と女将さんも喜んでくれましたよ!」
『へぇ、それはすごい。、こっちは俺からだ。』
信玄様が開けてくれた木箱からは、小さなお手玉や毬、鈴の付いた太鼓が現れた。