第14章 春の輪廻
『乾杯!』
皆が盃を高くあげた。
『今日も沢山作ったからな!しっかり食ってくれ!』
政宗が盃のお水をのみ干すと、たすき掛けをし直した。
その合図で何人かがお重を目の前に並べ始めた。
『今回は一人一人、重箱に詰めた。甘味はまた後でな。』
『ねぇ、。あんたはあんまり今日は歩き回っちゃ駄目だよ?』
『そうだぞ、ずっとそこに座ってろ。』
家康と秀吉さんが声をかけてくる。
「大丈夫だよっ!お酌したいし、皆と話したいじゃん。」
『手酌で十分。俺はお前の顔を見れればそれでいい。』
『謙信の言う通りだ。甘味があれば尚十分。』
『此度は、皆の側に行け。』
「もぉ、大丈夫なのに。」
『ふふふっ。』
背中から咲の笑い声かした。
「どうしたの、咲?」
『いえ。天下の武将様たちですのに、様には甘いのですねぇ。本当に幸せなお方です。』
政宗のお花見弁当は、焼き魚と鴨の山椒焼き。煮豆と青菜の白和え、味噌田楽が入っていた。隣の信長様の中身と違ったのは、私だけ厚焼き卵が入っていたこと。
私が喜ぶと、信長様は優しく笑い、政宗が『特別だからなっ』と
手を挙げた。
謙信様の前に、光秀さんが一升瓶と梅干しののったお皿を並べる。
静かに笑い合う二人を横目に見ていると、佐助くんが信長様へお酌を始めた。
『いつも、黙認していただきありがとうございます。』
「え、いつも?」
『あぁ。俺がさんを訪ねる時は、ほぼ知ってるはず。』
『当たり前だ。誰の城だと思っている?
…佐助。夜襲の折りの加勢との護衛、大義である。』
『いえ、さんの友人として思ったことをした迄です。』
「あ、ねぇ。あの時に助けてくれた軒猿さんたちっている?」
『あ、あぁ。何人かは今日来てる…かな。』
佐助くんが周りをくるりと見渡した。
『なんで?』
「お礼したくて。敵方なのに、あの時は私や安土を守ってくれたから。」
『軒猿に?』
「うん。…だめかな?」
『ふっ、駄目じゃないさ。さんは本当に優しいなぁ。』
『あとで、奴らの顔をあまり晒すことがないようにしながらの前に集めてやれ。』
『あ、…わかりました。もぉ、すごいな。さんは。』