第13章 虹色の縁(えにし)
私は政宗に抱かれるようにして、信長様の馬に乗った。
『ちゃんと捕まったか?』
『冷やさないように膝掛けちゃんとかけてよ。』
「わかってるよぉ。じゃあ、またねぇ、輝真くん!」
『行くぞっ。』
『はっ。』
全員が馬に股がると、隊列は進み始める。
信長様の肩越しに後ろを見ると、輝真くんは立ったままで、お母さんは地面におでこが付くほどに、頭を下げていた。
私が手を振ろうとしたその時だった。
『信長様、秀吉様っ。』
輝真くんの声が響いた。
隊列が静かに止まるのに、みんな振り向かない。
『しっ、死んだ、とう…父に恥じぬよう強くなります!
母をっ、幸せにしたい!命をかけて、頑張りますっ!』
輝真くんの話が終わって、周りを見渡すと皆の口許が緩んでいた。
『今の言葉、生涯忘れるな! 行くぞっ。』
「輝真くん、まってるねぇー!」
『、手を振りすぎて落ちるなよ。』
信長様の声と一緒に、たくましい腕がぐっと私を引き寄せる。
二人の姿が小さくなった頃、私は手元の小さな石を陽にかざした。
「きれい…。虹色。」
『まさか、こんな道中で世継ぎの護衛が決まるとはね。』
家康が、ふっと笑いながら口を開いた。
『という点に、吸い寄せられるようだな。』
『ふっ、それは俺達もだろう? 政宗。』
『まぁな。』
『様は、本当に素晴らしい御方ですね。』
『その石、ちゃんとしまっときなよ。』
「うん! なんか、この子が産まれたら賑やかになりそうだね。」
『乳母じゃなく世話係をつけるんだろ?』
「うん。秀吉さん、咲から聞いたの?私の時代に乳母って言う役割は、ほぼ無いし。出来る限り自分で育てたい。でも、勝手がわからないから世話係をつけてくれるんだ。咲が選んでくれるみたい。」
『兄様は世話係じゃなくていいのか?』
『御世継ぎのお世話はしたいがな。そればっかりじゃ、政務が進まねぇ。ふらっと出ていく誰かがいるせいでな。』
『…誰だろうな。』
『あんたですよ、光秀さん。』
「もうすぐ着く?」
『ああ、軒猿の気配が無いから、まだ奴らは来てないようだがな。』