第13章 虹色の縁(えにし)
『寒くはないか?』
「大丈夫です。」
ゆっくりと城門を出る隊列に、城下は騒然としていた。
『あっ、様!』
贔屓にしていた反物屋のご主人が声をかけてくれた。
「お久しぶりです!」
色々あったし体調も落ち着かなかったのもあって、城に籠りきりだったから、本当に久しぶりだった。
隊列が反物屋の前で止まると、町人たちも徐々に集まり始めた。
『なんと、!ご懐妊でしたか!』
「ようやく体調が良くなったので、出産前の最後の散歩です。」
『それは、ようございました。…、少しお待ちを。』
ご主人が店の中に入っていく。
『様っ!ご懐妊おめでとうございます。これは心ばかりの祝いの品です。』
「ええっ!」
差し出した小さな木箱を弥七さんが受け取り、信長様へ渡した。
中には垂れ桜をあしらったキラキラ輝く髪飾りが入っていた。
「わぁ、綺麗。」
『良いのか?』
『はい、日々の感謝と御世継ぎのご誕生をお祈りしております。』
「付けていいですか?」
『あぁ、挿してやる。』
しゃらり、と飾りが揺れる。
「ありがとうございます。大切にします。」
『城にまた反物を運ぶがよい。』
『はっ。』
「じゃあ、行ってきます!」
賑やかに手を振りご主人の見送りを受けた。
その後も、甘味屋さんの女将さんやご主人の手を振った。
万歳をする町人の方。
周りにいる武将達への黄色い声援。
城下を抜けるまで、とても賑やかだった。